この記事では、香料統計について元香料研究職がわかりやすく解説します。
最新の香料の統計が知りたい
フレーバー(食品香料)とフレグランス(香粧品香料)はどちらの方が市場が大きいんだろう?
そんな疑問にお答えします。
香料の統計は日本香料工業会に過去5年分が掲載されています。
しかし、数値しか載っていないのでパッと見で分かりにくいのが難点。
また、データ解釈もありません。
そこでグラフ化したものを作成しました。
ぜひブックマークして参考にしてください。
香料の統計に興味がある人はもちろん、就活や転職活動で香料業界について勉強している人にも役立つ内容だと思います。
香料業界の仕事に興味のある方は、「【2021】香料メーカーの仕事とは?研究職経験者が職種別に解説!」でくわしく解説しているので参考にしてください。
香料メーカー研究職として働いた経験から書いた記事なので貴重だと思います。
この記事を読むことで、”最新の香料統計”についてグラフで理解することできます。
また、フレーバーとフレグランスではフレーバーの方が圧倒的に市場が大きいこともわかります。
ぜひ最後までお読みくださいね!
香料統計とは?
香料統計とは、日本香料工業会のHPで公表されている”過去5年間の香料に関する統計”です。
具体的には、次の香料の”国内生産・輸入・輸出”における”数量・金額”について数値が記載されています。
- 天然香料
- 合成香料
- 食品香料
- 香粧品香料
- 国内生産・・・日本香料工業会に所属する会員報告による香料統計資料の製造合計
- 輸出入・・・財務省の貿易統計に記載されているデータ
国内生産と輸出入のデータの出典が違うので、本来はそれぞれのデータを直接比較することはできません(この記事では、わかりやすさのために比較している箇所があります)。
国内生産の食品香料と香粧品香料は、同じ出典のデータなので直接比較することができます。
天然香料・合成香料・食品香料・香粧品香料とは?
香料は原料として「天然香料」と「合成香料」に大きく分けることができます。
それぞれ別の記事でくわしく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
食品香料(フレーバー)・香粧品香料(フレグランス)についても別の記事でくわしく解説しています。
香料統計をグラフで説明
過去5年間における各香料の統計をエクセルでグラフ化しました。
内容はつぎのとおりです。
- 国内製造量
- 国内製造金額
- 輸出量
- 輸出金額
- 輸入量
- 輸入金額
各香料の国内製造量(2016年~2020年)
各香料の国内製造量(2016年~2020年) はつぎのとおりです。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
(食品香料の製造量)÷(食品香料の製造量+香粧品香料の製造量)×100(%) | 87.3 | 86.8 | 86.7 | 86.7 | 86.1 |
※但し、天然香料・合成香料は除く
合計金額は折れ線グラフで表しています。
- 天然香料の国内製造量はスズメの涙程度。国内ではほとんど天然香料は製造されていない
- 食品香料の国内製造量はダントツで多い
- (食品香料の製造量)/(食品香料の製造量+香粧品香料の製造量)×100(%)を求めると、85%以上が食品香料(フレーバー)であることがわかる
各香料の国内製造金額(2016年~2020年)
各香料の国内製造金額(2016年~2020年) は次のとおりです。
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | |
(食品香料の製造金額)÷(食品香料の製造金額+香粧品香料の製造金額)×100(%) | 86.4 | 85.8 | 86.0 | 86.3 | 85.3 |
※但し、天然香料・合成香料は除く
- 天然香料の国内製造金額はスズメの涙程度。
- 合成香料の国内製造金額は年々増加傾向にあり、合計製造金額は堅調に増加している
- (食品香料の製造金額)/(食品香料の製造金額+香粧品香料の製造金額)×100(%)を求めると、85%以上が食品香料(フレーバー)であることがわかる
フレーバーとフレグランスでは、フレーバーが市場の8~9割程度を占める”という話は、香料統計がソースになっています。
各香料の輸出量(2016年~2020年)
各香料の輸出量(2016年~2020年) は次のとおりです。
- 天然香料の輸出量はスズメの涙程度。年々減少している
- 合成香料の輸出量は増加傾向、香粧品香料は直近3年間で微減か?
各香料の輸出金額(2016年~2020年)
各香料の輸出金額(2016年~2020年) は次のとおりです。
- 香粧品香料の輸出金額が増加、輸出量とは反対の挙動を示している(原料高・為替などの影響?)
各香料の輸入量(2016年~2020年)
各香料の輸入量(2016年~2020年) は次のとおりです。
- 天然香料は輸入に頼っていることがわかる(国内製造量と比較)。2018年から2019年にかけて顕著に増加。
- 合成香料の輸入量は2018年をピークに減少傾向
- 香粧品の輸入量も2020年を除き増加傾向
各香料の輸入金額(2016年~2020年)
各香料の輸入金額(2016年~2020年) はつぎのとおりです。
- 天然香料は2018年から2019年にかけて輸出量が大きく増加したにも関わらず、輸入金額はむしろ減少傾向(安い原料が大量に輸入された?)
- 合計輸入金額は2018年をピークに減少傾向
2020年における各香料の国内製造量の割合
今回はフレーバー(食品香料)とフレグランス(香粧品香料)の割合をメインに比較しました。
合成香料や天然香料も含めて比較すると次のような結果になりました(2020年における各香料の国内製造量の割合)。
やはり、フレーバーが70%以上と圧倒的に多いですが、合成香料も約16%とフレグランスの割合を上回っています。
天然香料については、1%未満とかなり低いこともわかります。
まとめ:フレーバー(食品香料)のシェアが85%以上と圧倒的
この記事では、香料統計について解説しました。
- フレーバーとフレグランスで比較すると、過去5年間フレーバーが製造量・製造金額ともに85%以上のシェアがある
- 天然香料は海外に頼っているのが現状
- 国内製造量は横ばいであるものの、国内製造金額は着実に増加している
もちろん原料コスト、為替の影響など様々な要因があるので確実なことは言えません。
しかし、フレーバーやフレグランスが必要なくなる世界は現状考えられないので、まだまだ息の長い業界であると思われます。
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